導入事例

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株式会社インディ・アソシエイツ様

羽田空港国際ターミナルに設置された36面のデジタルサイネージシステム

解決のポイント

  1. 美麗な映像を映し出すために16K解像度のマルチディスプレイを提案
  2. 映像の完全同期を目指してシステムをゼロから作り直す
株式会社インディ・アソシエイツ
取締役 営業企画部 東京本部長:岡田 佳一氏

美麗な映像を映し出すために16K解像度のマルチディスプレイを提案

――36面のデジタルサイネージシステムを手掛けたきっかけはなんだったのでしょうか。

岡田氏:二年前の2012年、国際ターミナルの拡張計画にあたって、羽田空港がデジタルサイネージの新規導入に関するコンペを開催しました。ちょっとしたご縁があってこのコンペに参加することになったのですが、我々の提案した企画が羽田空港側の目に留まりコンサルタント契約を結ぶことになりました。この契約が、今回のシステムを関わることとなったそもそもの始まりです。

株式会社インディ・アソシエイツ
営業企画部 マネージャー コンテンツプロデューサー テクニカルディレクター:飛田 幹司氏

我々は以前からさまざまなマルチディスプレイを視察していたのですが、どれも画面ムラなどの気になる点が多く満足できるシステムはありませんでした。しかも、横幅が10m以上もあるような画面サイズに対してHDもしくはフルHD解像度の映像を表示させているのが一般的でした。コンテンツを制作する立場にある我々にとって、画質の良し悪しは決して妥協できない重要なポイントとなります。当時の現状に対しては「苦労して撮影してきた映像が、荒く汚い状態で表示されるのは何とも耐え難い」という思いがありました。

そこで我々は羽田空港に、「36面のマルチディスプレイで超高解像度の16K映像を表示させる」という企画を提案しました。当時、1台のパソコンで表示できる映像は4K解像度が最大だったので、4Kの映像をつなげていけば16Kになるだろうと安易に考えた発想です。この企画を最終的に羽田空港が採用してくれたため、今回のシステムを作る計画がスタートしました。

映像の完全同期を目指してシステムをゼロから作り直す

――システムを実現するにあたって苦労した点は?

飛田氏:まず頭を悩ませたのは「どうやって16Kの映像を再生させるか」という点です。そもそも16Kの映像を制作すること自体はそれほど難しい作業ではなかったのですが、複数の映像をつなげてズレを生じさせることなく再生させるためには、それなりの技術が必要でした。

複数の映像をズレなく表示させる技術は当時プロジェクションマッピングなどの分野ですでに利用されており、これらの事例ではソフトウェアによる同期が採用されていました。しかし、この手法は採用できませんでした。なぜなら、ソフトウェアによる同期を試してみたところ、微妙なズレが生じるケースが何度かみられたからです。映像の完全な同期という観点から見ると、これは許容できる範囲ではありませんでした。

また、今回のシステムに実装した「インタラクティブ機能」もこの手法を採用できない理由のひとつでした。インタラクティブ機能は、4つのWebカメラで人の動
きや顔などを検知し、コンテンツにさまざまな動きを追加できる機能です。この機能についても企画段階の当初から提案していたため、実現には大きなこだわり
がありました。しかし、ソフトウェアによる同期はこのインタラクティブ機能に対応しないため、機能の実装に主眼を置くとこの手法は利用できなかったのです。
このような理由から最終的にはハードウェアによる同期を採用し、新しいシステムをゼロから作り直すという決断を下しました。

恥ずかしいものは作れない!その思いでクオリティを追求

――解像度や新機能以外でポイントとなるのはどこでしょうか。

岡田氏:今回のシステムでは、クオリティに関する部分でかなり気を使いました。例えば、ディスプレイについては連番で製品を用意してもらうことで画面の品質を確保した経緯があります。なぜなら、マルチディスプレイは各ディスプレイを並べて設置するため、画質に大きな個体差があると明確にわかってしまうからです。さらにいえば、メーカーには工場出荷時に予備機も含めて50台以上を並べてチェックしてもらうといった対応もしていただきました。

また、今回のシステムでは12台のパソコンを使って36枚のディスプレイを表示させていますが、本当のことを言えばパソコンの台数を減らすことも可能でした。それこそ、6台のパソコンで同じシステムを構築することもできたでしょう。しかし、今回に関してはとにかく完璧を期したかった。だからこそ、できる限りリスクを
減らした機器構成を採用したという背景もあります。

飛田氏:NVIDIA Quadro SYNCによる映像の同期についても、納得できるシステムが構築できたと感じています。そもそもNVIDIA Quadro SYNCはCGのリアルタイムレンダリングなどで利用されてきたのですが、これを使って「映像を同期させる」という発想は今までありませんでした。そのため、今回のような使い方は非常に新しいケースといえるでしょうし、映像の完全同期には「NVIDIA Quadro SYNCでないと難しい」と実感しました。

そのほか、今回のシステムは空港内の保安エリアに設置されるという条件があったのは特殊なケースといえます。そもそも、保安エリアではメンテナンスを担当
する人間に対しても厳しいセキュリティが科せられるため、気軽に修理に出向くようなことができません。そのため、クオリティを担保する意味でパーツ管理な
どに優れた国内メーカーの55Xaを選んだという経緯がありました。

岡田氏:今回のシステムについては、従来よりも高いレベルでハードウェアやソフトウェアのクオリティを追求したという自負があります。始めはその難しさがわかっていなかっただけに、そこでとても苦労することになったという感じでしょうか。しかし、日本の玄関口になる新しい空港で多くの外国人旅行者が我々の36面マルチディスプレイを目にするのかと思うと、「恥ずかしいものは作れない!」という気持ちが強かったといえます。

デジタルサイネージが従来の枠組みを超える日も

――今後の展開や業界の未来などについてはどうお考えですか。

岡田氏:次の課題としては、インタラクティブ機能をもっと進化させたいと考えています。私が思うに、人は驚きがないとインタラクティブ機能を「面白い!」と
は感じてくれません。よって、見る人が何らかのアクションをすることで表示が切り替わるような仕組みのままでは不十分だといえるのです。将来的には、見る人
の目線などを感知して映像が無意識のうちに変化していくような仕組みを完成させたいです。

飛田氏:2020年に東京オリンピックが開催されることもあり、デジタルサイネージの業界は大きな注目を集めていると思います。マルチディスプレイについても
100枚以上のディスプレイを使った案件も出始めていますし、異業種とのコラボレーションなども企画として立ち上がっていることを踏まえれば、今後もどんど
ん成長していくのではないでしょうか。デジタルサイネージが、「看板」や「広告」といった従来の枠組みを超える存在になる日も近いかもしれませんね。

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会社名
株式会社インディ・アソシエイツ
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http://indy-net.co.jp/