グラフィックスカードを選ぶのにiCHILL(アイチル)をチェックしないなんてモッタイナイ! と思わず叫んでしまう理由とは

グラフィックスカードを選ぶのにiCHILL(アイチル)をチェックしないなんてモッタイナイ! と思わず叫んでしまう理由とは

というと、 “前世紀”から秋葉原のPCパーツショップを徘徊してきたベテランの皆さんは「え、けっこう昔から店頭で存在感ありましたよね」と思うかもしれない。しかし、最近ではショップを訪れない人も増えているのでメジャーブランドと比べると“知らない人”が意外と多かったりする。ううーん、それはもったいない!

この記事では、「なぜINNO3D(イノスリーディー)を知ってもらいたいのか?」の理由を知ってもらうためにINNO3D(イノスリーディー)のハイエンドブランド「iCHILL(アイチル)」シリーズの“解体ショー”を敢行した!

  • 地味ながら長らく日本の自作PCユーザーに知られてきたINNO3D(イノスリーディー)ブランドのハイエンドシリーズ「iCHILL(アイチル)」の1つ、GeForce RTX 4070 iCHILL X3
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01そもそも「INNO3D(イノスリーディー)
「iCHILL(アイチル)」ってなんぞや?

1990年代末から秋葉原のPCパーツショップを中心に店頭で販売されていたグラフィックスカード「INNO3D」は香港を拠点とするPCパーツベンダー「InnoVISION Multimedia」のブランドだ。登場当初はASUSやGIGABYTEなどの台湾系メジャーベンダーと比べて最新のGPUを搭載した製品を購入しやすい価格で投入することから、PCパーツショップに足繁く訪れるユーザーを中心に「知る人ぞ知る」ブランドとして支持を増やしていった。

しかし、最近では処理能力をNVIDIAなどのリファレンスデザインからより高めたハイグレードな製品も投入している。今回紹介する「iCHILL」シリーズは、そのハイグレードラインアップに位置づけられている。iCHILLシリーズでは、同じGPUを搭載したGPUベンダーのリファレンスデザイングラフィックスカードと比べて高い処理能力を与えている。その典型的な仕様がGPUの動作クロックだ。

通常、リファレンスデザインのグラフィックスカードでは搭載するGPUの動作クロックをGPUベンターが指定する定格に設定している。例えば、NVIDIAの最新GPUである、GeForce RTX 40シリーズそれぞれの動作クロックは以下のように設定されている。

GPU NVIDIA CUDAコア数 GPU ベースクロック GPU ブーストクロック
GeForce RTX 4090 16,384基 2.23GHz 2.52GHz
GeForce RTX 4080 9,728基 2.21GHz 2.51GHz
GeForce RTX 4070 Ti 7,680基 2.31GHz 2.61GHz
GeForce RTX 4070 5,888基 1.92GHz 2.48GHz
GeForce RTX 4060 Ti 4,352基 2.31GHz 2.54GHz
GeForce RTX 4060 3,072基 1.83GHz 2.46GHz

一方、iCHILLシリーズのラインアップでそれぞれのGPUを搭載するモデルにおけるGPUの動作クロックは以下のようになる。なお、INNO3D iCHILLシリーズを扱っているELSA ONLINEでは、同じGPUを搭載する製品としても複数のモデルを擁しているが、ここではその中でも最もオーソドックスなモデルの設定を挙げている。

製品名 GPU NVIDIA CUDAコア数 GPU ベースクロック GPU ブーストクロック
INNO3D
GeForce RTX 4090
iCHILL BLACK
GeForce RTX 4090 16,384基 2.235GHz 2.58GHz
INNO3D
GeForce RTX 4090
iCHILL X3
GeForce RTX 4090 16,384基 2.235GHz 2.58GHz
INNO3D
GeForce RTX 4080
iCHILL X3
GeForce RTX 4080 9,728基 2.205GHz 2.565GHz
INNO3D
GeForce RTX 4070Ti
iCHILL X3
GeForce RTX 4070 Ti 7,680基 2.31GHz 2.67GHz
INNO3D
GeForce RTX 4070
iCHILL X3
GeForce RTX 4070 5,888基 1.92GHz 2.535GHz
INNO3D
GEFORCE RTX 4060 Ti 8GB
ICHILL X3
GeForce RTX 4060 Ti 4,352基 2.31GHz 2.595GHz

このように、リファレンスデザインと比較すると負荷の高いブーストクロックでiCHILLシリーズの製品は高い設定となっている。数値としてはわずかのように見えるかもしれないが、そもそもリファレンスデザインでもギリギリのクロックで攻めているところを、さらにそれを上回る速さをたたき出しているわけで、負荷とそれに伴う発熱は“確実”に対処する必要がある。

02解剖! iCHILLシリーズのクーラーユニット

このように、膨大な発熱が起きる状況になると、最近の半導体では熱による内部破損や動作の不安定を回避するために、内部センサーで温度を把握して危険なレベルに達したら自動でクロックを下げる仕組みになっている。そのため、グラフィックスカードに搭載したクーラーユニットに十分な冷却性能がないと、GPUはその処理能力をフルで発揮でなくなってしまう。

この状況を防ぐために、グラフィックスベンダーでは効率の高いクーラーユニットを用意して高い動作クロックでも安定した動作を可能にしている。iCHILLシリーズのハイエンドからミドルレンジ(GPUとしてはGeForce RTX 4090からGeForce RTX 4070に至るライン)モデルでは、クーラーユニットに厚さが3スロット分にも達する超巨大なクーラーユニットを採用している。その構造は大きく3つの部分に分かれている。

そこで、iCHILLのラインアップから現時点のGeForce RTX 40搭載ラインアップで価格対効果が最も高いと支持が高いGeForce RTX 4070を搭載した「INNO3D GeForce RTX 4070 iCHILL X3」の評価用機材を“エルザ ジャパンの許可を得た上で”分解し、そのクーラーユニットの構造を実際に確認してみた。

※ご注意:一般ユーザーの方がグラフィックスボードの分解を行うと、製品保証の対象外となります。

大きく分けて3つのブロックに分かれた大型のヴェイパーチャンバーは、どれも幾重にも重なったフィンで構成されている。このフィンの厚さと間隔はクーラーファンから送られる風量が最大効率となるように最適化されている。ちなみに、評価機材に搭載されていたクーラーユニットを実測してみたところ、フィン1枚の厚さは実測で0.4mm。そして、フィンの間隔は同じく実測で1.5mm。

大きく3つに分かれたクーラーユニットの中央は、GPUやグラフィックスメモリから発生する熱を吸収するヴェイパーチャンバーとなる。従来の銅ベースチャンバーと比べて約2倍という高い熱伝導率でGPUやグラフィックスメモリから発生した熱を放熱ブロックに誘導する。

メインの大型チャンバーからバックパネル寄りにある小型のヴェイパーチャンバーは電源回路から発生する熱を吸収して放熱ブロックに誘導する。大電力で駆動するハイエンドグラフィックスカードでは電源回路から発生する熱も膨大で、この部分の確実な冷却も安定した動作には欠かせない。

GPU、グラフィックスメモリ、電源回路などから発生した諸々の熱は、8本(中央部ブロック)もしくは6本(電源回路ブロック)の径6mmヒートパイプよってグラフィックスカード全体のほぼ半分の容積を占める最も大きなヒートシンクに誘導される。そのサイズは実測で長さ166.5×幅118.5×厚さ38.0mm。

ここから、グラフィックスカード背面に取り付けたバックプレートに設けたスリットをくぐって、3連のクーラーファンによって力強く排出される。この3連で搭載したクーラーファンは中央の1基がその左右のファンと逆方向で回転するようにしている。これで、それぞれのファンで発生風の干渉を減らし乱気流を低減することで冷却効率を高めている。さらに、乱気流を減らすことは騒音の抑制にもつながっている。

03基板レイアウトと実装半導体をチェックする

全体のサイズとしては、長さ334×高さ148×幅62mmという大柄なグラフィックスカードだが、その多くの部分は先に述べたクーラーユニットが占めている。グラフィックスカード本体ともいえる基板のサイズは、長さ167×148mmとだいぶコンパクトに収まっている。基板形状でユニークなのは、同じRTX 4070 GPUを搭載した多くのグラフィックスカードでカード端が直線(カード形状としては長方形)であるところ、INNO3D GeForce RTX 4070 iCHILL X3では、左右それぞれで斜めにカットした燕尾(えんび)形としているところだ。

基板の中央にはGPUとしてGeForce RTX 4070を載せて、その周囲にはグラフィックスメモリを配置する。INNO3D GeForce RTX 4070 iCHILL X3のグラフィックスメモリ容量は12GBだが、実装するメモリモジュールはMicron TechnologyのGDDR6X「MT61K512M32KPA-21」を6基のせていた。MT61K512M32KPA-21は容量16Gビットで動作クロックは10.5GHz(転送レートで21Gbps相当)、駆動電圧は1.3095Vから1.3905Vを許容範囲としている。

ブラケット金具側(もしくは出力コネクタ側)には電源回路関連の半導体を10フェーズ分実装している。また、映像出力インタフェースとしてHDMI 2.1aを1基、そして、DisplayPort 1.4aを3基備えている。

2023年の今、PCを自作するならグラフィックスカードにGeForce RTX 4070を選択するのが価格対効果としては賢明だ。しかし、同じ“4070”でもクロックを速めてチューンナップされたモデルを選びたい。そのとき、ここで見てきた強力なクーラーユニットを搭載したiCHILLシリーズは有力な購入候補としてチェックしておくことを忘れないようにしたい。