INNO3Dの“4080”を最新PCゲームの激重設定でブン回してみた
コンシューマーゲーム機やスマートフォンでのゲームプレイが主流だった日本でもeSportsの盛り上がりと共にPCゲームプレイヤーも近年急増している。PCでゲームをするならやっぱり別次元レベルで美しいグラフィックス描画をギュンギュンに走らせたい。そのために不可欠な“イマドキ”ハイエンドグラフィックスカードの実力をみてみよう。
01PCゲーマーにお勧めしたい“4080”ってなに?
最近の自作PCユーザーの多くにとって“ELSA”は「GPUコンピューティングを駆使する研究職や開発職向けのマジメベンダー」という質実剛健なイメージが強いかもしれない。しかし、それと共に、いや、正しくはGPUコンピューティングに取り組むずっと以前から自作PCユーザーから長く、そして、熱く支持されてきた“歴史”があった。
近年、特に21世紀以降になってGPUコンピューティングを軸としたワークステーションやAR、VR製品の利活用シーンを訴求する機会が多くなっているが、“ELSAの中の人”が「いや、最近はまたPCゲームにも力を入れているんですよ」と筆者に直接訴えるほどにグラフィックスカードやゲーミングPCの取り組みにも注力している。その取り組みの1つが日本でも自作PCユーザーから長きにわたって知られているINNO3Dのハイパフォーマンスブランド「iCHILL」の取り扱いだ。
今回は、エルザ ジャパンが扱っているiCHILLラインアップからGeForce RTX 4080を実装した「INNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3」を取り上げて、その処理能力を検証してみたい。
GeForce RTX 4080は、2022年11月15日に登場したGeForce RTX 40シリーズ世代のGPUだ。GeForce RTX 40シリーズのラインアップにおける立ち位置は「GeForce RTX 4090」と「GeForce RTX 4070 Ti」に挟まれたミドルハイエンドモデルといえる。登場から半年近くが経ち、主要なニュースサイトでも紹介記事やレビュー記事が数多く掲載されているので、このWebページにたどり着いた皆さんには周知のこととは思うけれど、ここで取り上げるINNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3の基本的な仕様を念のため確認しておこう。
製品名 | INNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3 |
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搭載GPU | NVIDIA GeForce RTX 4080 |
CUDAコア | 9728コア |
ベースクロック | 2205MHz |
ブーストクロック | 2565MHz |
グラフィックスメモリ | GDDR6X |
グラフィックスメモリ容量 | 16GB |
メモリ幅 | 256ビット |
ここで注目しておきたいのがブーストクロックだ。iCHILLブランドは独自のオーバークロックを施して高い処理能力を訴求するラインアップだが、GPUベンダーのNVIDIAが示すGeForce RTX 4080のリファレンスデザインのブーストクロックが2.51GHzとされているのに対してINNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3ではそれより高い2.56GHz(2565MHz)まで達する。同然、ブーストクロックの高さ分だけリファレンスデザインを上回る処理能力が期待できる。
コアアーキテクチャは従来のGeForce RTX 30シリーズのAmpereからAda Lovelaceと世代が進化し、レイトレーシングコアは第2世代から第3世代に、AI演算に関わるTensorコアも第3世代から第4世代にそれぞれ上がっている。ゲーム描画処理関連では低解像度画像から高解像度画像をAI活用によって生成し、フレームレートの向上を図るDLSSが従来のDLSS 2対応からAIによるフレーム生成に対応するDLSS 3をサポートするようになった。
02ここが違う! 激重設定で変わるPCゲームの表現
GPUの世代が進化するたびに「それって意味あるの?」とはよく言われる言葉だ。一世代前、もしくは、二世代前のGPUを実装した(今となっては安価な)グラフィックスカードや最新世代ながらやはり安価なミドルレンジ以下のグラフィックスカードでも「画質設定を下げれば実用的なフレームレートを発揮できるもんね」という言葉もよく聞く。
しかし、コンシューマーゲーム機と比べたPCゲームの大きな特徴の1つとして「高品質な映像」があり、これを快適な描画速度で享受しようとすると最新世代のGPUを搭載したグラフィックスカードが必須となる。確かにプレイするゲームの画質設定を下げていけば一世代二世代前のGPUやエントリークラスのGPU(なんならCPUに統合されたグラフィックスコア)でもゲームがプレイ可能なフレームレートは不可能でない。ただ、それではPCゲームの存在意義を手放してしまうことと等しい。
PCゲームならではの画質設定で快適なゲームプレイができるフレームレートを出そうとするときこそ、ハイエンドGPUを搭載したグラフィックスカードの出番だ。
「そんなこといって、速度優先の低画質だって最高画質と見た目そんなに変わらないでしょ」と思うかもしれない。
しかし、「描画は重いけれどゲームは面白い」ことでゲーマーから熱く支持されているPCゲームタイトルで解像度1920×1080ドットのいわゆる「フルHD」かつ描画速度を優先した設定と、3840×2160ドットのいわゆる「4K」でエフェクトなどモリモリに有効にした描画品質優先設定のそれぞれでゲームプレイ画面を比較してみると、その違いは一目瞭然だったりする。
それらの分かりやすい例としては、反射や映り込みといった光線の描画処理、そして、樹木や岩、地面などの描画処理が挙げられる。画質設定を低レベルから「超高」「ウルトラ」などといった高いレベルに変えていくとその書き込みはクリアで精緻になり、加えて、最近のヘビー級PCゲームでも対応タイトルが増えているレイトレーシング機能を有効にすると反射や映り込みでリアリティの描画処理が実現するようになるのが確認できるはずだ。
次に挙げるゲームタイトルを所有しているなら、解像度設定をフルHDと4K、画質設定を最低レベルから最高レベルにそれぞれ切り替え、かつ、レイトレーシングに対応しているならその機能でも無効、有効を切り替えて、それぞれのポイントでゲーム画面を見比べてほしい。きっとPCゲームで最高レベルの画面設定でプレイする意味を見出せるはずだ。
【CyberPunk 2077】
解像度がフルHDから4Kに上がって描画が緻密になったのは当然として、クイックリファレンスが最低からウルトラに変化すると冒頭カフェバーのカウンター席シーンでビンなどの反射描画が細かくなり、レイトレーシング機能を有効にしてその品質も低からウルトラと上げるにしたがってよりくっきりとクリアに描かれるようになる。
【Call of Duty: Modern Warfare II】
中間部で外に駐車しているランドクルーザーがミサイル攻撃で爆発した後、石垣に囲まれた細い路地を突撃するシーンで、同じ4Kの解像度でもクオリティプリセットが最低だと壁面の描画が“板状”だが、ウルトラに上げると積み上げた岩の一つ一つの凹凸までリアルに再現されている。
【F1 22】
最も分かりやすいのが雨の表現で、ベンチマークテストの設定で「ウエット」にして雨を降らせると、詳細プリセットが低の状態では降ってくる雨粒を細い線で表現するのみだったのが、詳細プリセットを超高に上げると水煙からバイザーにあたる水滴まで再現される。
【FarCry 6】
FarCry 6でも解像度がフルHDから4Kに上がると“モブキャラ”などの書き込みが細かくなっている。加えて、画質設定を挙げていくと路面の水たまりに反射する周囲の景色や濡れた路面に映り込む周辺の反射光の描画がリアルになっていく変化も分かるだろう。
【シャドウ オブ ザ トゥームレイダー ディフィニティブエディション】
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
ディフィニティブエディションでは、解像度を上げて画質を向上させるにつれて髪の毛の表現が“サラサラ”になり、枝に止まっている鳥の描写、樹木の葉や枝、幹の表現がリアルになるのが分かる。特に「SMAA
4x」を有効にするとそれ以外の設定でジャギーが残っていた枝の表現がなめらかになっているのは分かりやすい変化といえるだろう。
さらに、影の描写もプレイにおけるリアリズムの演出の大きく作用する。シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
ディフィニティブエディションでは、全ての設定で人物の影を描画しているが、画質低では影が全く描かれないタイミングがある。また、SMAA
4x設定では影の周辺域をぼかす処理を加えているが、この場合でも影全体が“ベタ塗り”になることが瞬間瞬間で発生する。しかし、レイトレーシングを品質設定で有効にすると自然な影描画が常に行われている。
03チェック必須! 最新ゲーム激重設定スコア
このように画質設定を挙げることでリアルな描画が可能になるが、それとともにグラフィック描画に要する演算量は爆発的に増加する。スムーズなゲームプレイのためには60fps程度のフレームレートが望ましいとされている。最新世代のハイエンドGPUであるGeForce RTX 4080を採用したINNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3は最新のゲームタイトルでリアルな描画設定で快適なゲームが可能だろうか。
そこで、CPUにRyzen 7 5700Xを搭載してシステムメモリ容量32GBを確保したPCにINNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3を組み合わせて最新のPCゲームでベンチマークテストを走らせてみた。
設定では、まず解像度の影響を見るために品質設定をプリセットの標準レベル、もしくは、最も軽いレベルにそろえて解像度を1920×1080ドットと3840×2160ドットのそれぞれで比較、ついで、品質設定の影響を見るために解像度を3840×2160ドットにそろえて、品質設定をプリセットの標準レベル、もしくは、最も軽いレベルとプリセットの最も重いレベルのそれぞれで測定したスコアを比較する。
なお、プリセットと連動していない設定項目についてはそれらを無効、有効にしたそれぞれのスコアも並べてみた。また、スコアの値は特に表記ない場合はスコアとして出力された「平均FPS」の値としている。
さすがGeForce RTX 4080ということで、解像度を4Kまで上げても全てのゲームタイトルで平均FPSが60を大きく超えている。画質設定を最上レベルまで上げる、または、レイトレーシング機能を有効にするとさすがにスコアはガクッと下がる。が、それでもCyberPunk 2077とF1 22を除いて60FPSは超えている。
注目したいのは、DLSS機能を有効にしたときのスコアの大幅な“回復”だ。特にGeForce RTX 40シリーズから対応した最新のDLSS 3(DLSS Frame Generation)が利用できるF1 22ではDLSS 2有効時を大きく超えてスコアを回復させている。
イマドキPCゲームの存在意義でもある超高品質画像を堪能したいゲームユーザーにとってベテランユーザーからの信頼が高いINNO3D GeForce RTX 4080 ICHILL X3はぜひとも導入を検討してもらいたい逸品だろう。