「ELSA VELUGA G3-15+モバイルディスプレイ」の答えが「2」では収まらない話

ワークステーションといえば、従来はとにかく処理能力優先で大きな筐体のタワー型、もしくはデスクトップ型が主流でした。以前からクラムシェルスタイルのノートワークステーションもありましたが、こちらも初めは省スペースが主な目的で持ち運ぶことは副次的に考えられていたため、ボディは分厚く重さも3キロを超えるモデルがほとんどでした。

しかし、最近ではワークステーションでも持ち運べることを重視した「モバイルワークステーション」の需要が伸びています。
以前からクライアントに出向いたときでも自分のオフィスや研究開発環境と同じ処理能力を使える利便性で注目を集めていましたが、最近では在宅勤務でも作業効率を維持できる手段としてモバイルワークステーションを導入するケースが増えています。

エルザ ジャパンのELSA VELUGAシリーズもそのような軽量薄型のモバイルワークステーションに含まれ、その最新モデルが「ELSA VELUGA G3」です。従来モデルの「ELSA VELUGA G2」と比べて、搭載するCPUやGPUが新しい世代に更新されています。


この記事では、ELSA VELUGA G3シリーズの中から15.6インチ液晶を搭載した「ELSA VELUGA G3-15」をピックアップし、その使い勝手に加えてモバイルワークステーションとしての作業環境を大幅に改善する「ひと工夫」をご紹介します。

「ELSA VELUGA A3000 G3-15」(以下、VELUGA G3-15)は、15.6型ディスプレイを搭載するクラムシェルスタイルのモバイルワークステーションです。本体のサイズは約358(幅)×248(奥行)×20(厚さ)ミリで重さは約2.1キロに収まっています。従来のGPU搭載ノート型ワークステーションでは重さが2キロ後半から3キロに達することも多かったことを考えると、ほぼ2キロのボディは持ち出す携帯性能として大幅に向上しているといえるでしょう。

はじめに、本稿では開発用のテスト機を用いた為CPU/GPU/液晶の組合せが量産モデルとは異なることをお断りしておきます。
テスト機が搭載するCPUは、2021年5月に登場した“Tiger Lake-H”こと第11世代CoreプロセッサーファミリーのCore i9-11900Hです。この第11世代ではプロセスルール(CPU内部の配線)を前世代モデルから改良した”10nm SuperFin”とすることで前世代の同クラスモデルと比べてCPUの処理能力が20%向上しており、加えてi9-11980Hでは8コア16スレッドという第11世代のノートPC向けCPUでは最上位のコア/スレッド構成となっています。
動作クロックはcTDP(Configurable TDP/発熱を一定の値以下に抑える機能)で2.5GHz、ターボ・ブースト利用時の最大周波数は4.9GHzに達します。また、Intel Smart Cache容量は合計で24MBを組み込んでいます。


CPU-Zで表示したCore i9-11900Hの仕様情報。VELUGA G3-15シリーズ量産版では上位のA5000との組み合わせになる。

テスト機が搭載するGPUはNVIDIA RTX A3000 Laptopで、NVIDIAが2021年4月に発表したワークステーション向けGPU「NVIDIA RTX Aシリーズ」のノート向けミドルレンジモデルです。Quadro RTXシリーズの後継製品という位置付けでNVIDIAが2020年に投入した”NVIDIA Ampereアーキテクチャ”をノートPC向けとしたもので、CUDAコアの数は4096基、NVIDIA RTコアは第2世代を32基、Tensorコアは第3世代を128基実装しています。グラフィックスメモリはGDDR6に対応して容量は6GB。メモリインタフェースのバス幅は198bitを確保しています。評価機材をGPU-Z 2.44.0で調べたところ、GPU Clock欄で930MHz、Boost欄で1485MHzと表示されていました。


GPU-Zで表示したNVIDIA RTX A3000 Laptopの仕様情報。VELUGA G3-15シリーズ量産版では下位モデルとなる。

第11世代Core i9-11900HとNVIDIA RTX A3000 Laptopを組み合わせたVELUGA G3-15(テスト機)の“ワークステーション”としての処理能力を検証するため、3DCG制作アプリケーションやCADアプリケーションで多用するOpenGLに対する処理能力を測定できるベンチマークテストとして「SPECviewperf 2020」を実施しました。なお、比較対象としてCPUにAMD Ryzen 7 5800Hを搭載しGPUにNVIDIA GeForce RTX 3060 Laptopを採用した典型的なゲーム向けノートPCで測定してスコアを並べてみました。

SPECviewperf2020スコア比較
SPECviewperf2020
スコア比較
VELUGA G3-15 比較対象ノートPC
3dmax-07 45.97 18.06
catia-06 38.9 15.27
creo-03 49.47 38
energy-03 19.71 4.13
maya-06 70.97 77.71
medical-03 15.33 13.02
snx-04 89.32 11.19
solidworks-07 55.58 48.66

比較対象のゲーム向けノートPCも搭載するCPUやGPUは最新の製品とほぼ同じ構成で、ゲーミングベンチマークテストでは優れたスコアをたたき出せます。しかし、ワークステーションが対象としている3DCG制作アプリケーションやCADアプリケーションで多用するOpenGLでは、ここで示したようにNVIDIA RTX A3000 Laptopを搭載するVELUGA G3-15の処理能力が明らかに上回ります。この処理能力をどこにでも持ち運べることに、VELUGA G3-15の真価があるといっていいでしょう。

本体に搭載するインタフェースはUSB 3.2 Gen2 Type-Aが3基に USB 3.2 Gen2 Type-Cが2基。このUSB Type-Cは右側面の1基がThunderbolt 4にも対応しているので外部映像出力としても利用できます。映像出力としては他に、HDMI 2.1も用意しています。

ネットワークでは2.5GBASE-Tにも対応する有線LAN(RJ-45)も備えています。無線接続ではコントローラに高速で高品質な接続が要求されるゲーミングPCでも採用されているインテル Killer AX1675を実装してIEEE802.11axに対応した他、Bluetooth 5.2も利用できます。


  • 右側面には電源コネクタ、Thunderbolt 4、HDMI出力、USB 3.2 Gen2 Type-Aを備える

  • 左側面はヘッドホン&マイクコンボ端子、USB 3.2 Gen2 Type-C、USB 3.2 Gen2 Type-A 2基、有線LANを搭載する

  • 正面。このアングルから見るとモバイルワークステーションとしては異例なほどの薄さが分かる

  • 背面には排気用スリットが並ぶ

ディスプレイは大画面かつ携帯利用のためにボディサイズをコンパクトにできるバランスの取れた15.6型を採用しています。周りが映り込まず作業に集中できる非光沢パネル解像度は3840×2160ドットに達します(※)。4Kクラスの表示領域を有しているわけですから、多数のトレイを開いて使うことが多い3DCG映像編集、アドビシステムズをはじめとする一連のクリエイター向けアプリケーションやCAD系に物理演算シミュレーターといったエンジニア向けアプリケーションなども存分に使いこなせるでしょう。(※)量産モデルではA5000搭載の上位モデルに4K液晶パネル搭載モデルを設定。A3000搭載モデルはフルHDパネルとなります。

ただ、15.6型ディスプレイで4K解像度をフルに使おうとするとフォントサイズが細かくなって難儀することになります。広大な解像度で多数のトレイを思う存分並べることができるようになりますが、表示ズーム設定を100%にすると中に描かれているフォントが小さすぎて視認が難しくなってしまうのです。かといって、Windows推奨設定の250%では画面が狭くなってせっかくの4Kクラス解像度が無駄になってしまいます。

あるいは、オフィスや自宅で日常的にマルチディスプレイ環境に接して作業をこなしていると、たとえ一時的な外出といえども長時間の作業が必要な場合や資料を多く並べて参照が必要な場合などに、どうしても表示面積の少なさを感じてしまう場合が多くあります。広大な表示/作業領域を必要とするアプリケーションと文字情報を重視したいアプリケーションで使用するディスプレイを切り分けて使えば、作業効率をさらに向上できます。

いま、VELUGA G3-15に関心があるならば、ここで「マルチディスプレイ環境が便利なのは重々承知しているけれど、外に持ち出すことができないよなあ」と思っている人も少なくないかもしれません。せっかく、パワフルな処理能力をどこでも使うためにVELUGA G3-15を検討しているのですから、持ち出せないマルチディスプレイ環境では意味がありません。


モバイルディスプレイがあれば、オフィスの外でもマルチディスプレイ環境が構築できる
そのようなときに検討したいのが『モバイルディスプレイ』です。アイ・オー・データ機器の「LCD-CF162XAB-M」は、重さ約700gの軽量なモバイルディスプレイです。USB Type-CケーブルでPCと接続するだけでマルチディスプレイ環境を構築できます。ディスプレイサイズは15.6型とVELUGA G3-15と同じで解像度は1920×1080ドット。背面に角度を無段階で調整できるスタンドを備えているので本体だけで自立可能です。なお、USB Type-Cで接続して駆動電力と映像信号の両方をPCからケーブル1本で供給することも可能ですし、USB Type-Cで駆動電力のみ供給(USB PD準拠)して映像信号はHDMI接続で利用することも可能です。


  • 4K解像度のVELUGA G3-15(テスト機)では精密詳細で広範囲表示を必要とする制作用アプリケーションを表示

  • モバイルディスプレイには多数の作業用トレイやテキスト、サンプル画像を表示するなど目的に合わせて使い分けることで作業効率は“いつでもどこでも”向上する

  • 背面に組み込んだスタンドは最大65度まで倒せる

  • 右側面には映像入力兼電力供給のUSB-Cが2基とHDMI入力、ヘッドホン端子を備える

本体全面が液晶パネルとなるモバイルディスプレイに対して「液晶面が破損しそうで持ち歩くのはちょっと不安」と思う人も多いかもしれません。しかし、LCD-CF162XAB-Mには持ち運び用のインナーバッグが標準で付属します。外部からの衝撃を防ぐ緩衝素材の他に液晶パネルを守る剛性素材も備えているので安心して持ち運びできます。


持ち運び時の破損が恐いモバイルディスプレイだけにインナーバッグが標準で付属するのはありがたい

いま、場所を選ばずに「これまで通り」で仕事ができることが求められています。訪問したクライアントで、自宅で、サテライトオフィスで、そして、そのオフィスもフリーアドレスを導入して、プロジェクトごとに効率が高まるように有機的に構成を変化できるようになっています。

このような流れにおいて、VELUGA G3-15とモバイルディスプレイの組み合わせで柔軟の高い作業環境を作り出すことは、生産性の向上に大きく貢献するでしょう。

ELSA VELUGA A3000 G3-15(1TB)

プロフェッショナルのために造られた「NVIDIA RTX A3000 Laptop」と第11世代インテル Core i7プロセッサーを搭載した15.6インチモバイルワークステーション
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